WARAKUSHA

2023.03.02

【内科系】標榜科目別、クリニック設計のポイント

数あるクリニックの中でも
「ちょっと体調が悪い」
「花粉症の季節だから受診しよう」
など、多くの人が気軽に利用するのが
内科系のクリニックではないでしょうか。

本コラムではそんな内科系医院の標榜科目を切り口に、
それぞれのクリニック設計のポイントを
抜粋・解説します。


【目次】
0.内科系クリニック設計の共通事項
1.消化器内科
2.心療内科
3.小児科

0.内科系クリニック設計の共通事項

医院空間の設計においても
多種多様な患者さんが訪れる内科系のクリニックでは、
特に明快で効率的な動線計画が求められます。

例えば

・誰でも迷わず、安全に受付に辿り着ける
・受付→問診、診察までの動線が短い
・車椅子で通行できるゆとりある空間と丈夫な内装

これらを大前提とした上で、
標榜科目やクリニックならではの特徴に合わせ、
スムーズに診察できる環境を整えます。

建築の計画が、医院経営の根幹となる
顧客満足度の向上と業務効率化の両立に
大きく影響するといっても過言ではありません。

以上をふまえ、標榜科目ごとに細分化して
それぞれの設計のポイントの一部をご紹介します。


関連記事▼

個人病院のユニバーサルデザイン:
【第1回:「すぐわかる」デザイン】
【第2回:「安全」なデザイン】

【メディア掲載記念】クリニック設計
決め手は 「患者さん」「医師」「スタッフ」3者の満足

1.消化器内科の設計のポイント

【検査の種類や診察との関係を精査】

消化器内科の大きな特徴は検査や処置等、
診察以外の項目に現れます。
クリニック建築の設計においても、
検査ごとの性質や前後の診察の流れに合わせて
全体の室配置や動線を計画していきます。

例えば同じ内視鏡検査でも
上肢にある胃の検査では内視鏡を口から入れますが、
下肢にある腸検査では下着を脱ぐ必要が生じます。
したがって検査室はプライバシーを守れる位置とし、
更衣室、個別トイレ等の関連諸室も
近接させることとなるでしょう。
麻酔をかける検査では
リカバリー室への動線も考慮が必要です。


リカバリ.JPG内視鏡検査用リカバリー室
更衣室・トイレに近接。
プライバシーを守れるよう院内奥に配置している。


消化器内科の建築デザインにおいて
ポイントとなるのは、以下の項目です。


・診察は検査の前か後か、もしくは両方か。

・予約制の検査など、
 診察と別日に行う検査が頻繁にあるか。

・心電図の後に胃腸の検査など、
 一度に複数の検査を組み合わせるか。

・採血はどのタイミングで、誰が行うか。


これらは院長先生の方針によって
様々なパターンがあり、
それによって最適な室配置や動線計画も
大きく変わります。

例えば、
以下は消化器内科の間取りゾーニング例です。

診察とは別に、
検査専用の受付と待合を設けています。
(図内③)

動線設計 .jpg

① 駐車用と建物出入口は患者さん用と通用口に分け、
  互いに行き合わないよう動線を分離。

② 通用口から直結の医師・スタッフ専用の階段。
  2階の院長室やスタッフ休憩室につながっている。

③ 検査部門と診察部門それぞれに受付・待合室を
  設けている。患者さんの動線は
  ・診察→検査
  ・検査のみ
  いずれのパターンにも対応できる。

④ 患者さんが行き来する「待合」・「中待合」・
「検査待合」。シンプルで迷いにくい動線に。

また、救急搬送用の出入口を設け
患者さんの駐車場や待合室からは見えない位置に
配置しています。

▼参考事例:
「医療法人社団千寿会様 鈴木内科」

2.心療内科の設計のポイント

【「目立たない」と「わかりやすい」の両立】

心療内科の場合には、
「クリニックに入る姿を人に見られたくない」
という心理への配慮が大切です。
かといって
初めての患者さんもすぐに建物を見つけられ、
戸惑いなく建物へ入れる工夫も欠かせません。
立地の検討段階から設計者に相談するなど、
敷地単位で計画を進めていただきたいと思います。

立地条件.jpg心療内科・精神科の立地の例。
大通りから入って2軒目に位置する。
建物手前に駐車場をゆったりと設け、
見つけやすく入りやすい環境。

【心理的安全の確保】

標榜科目上の性格から、
患者さんが心理的安全を感じられる空間づくりが
特に重要となります。

例えば以下のような配慮項目が挙げられます。
・一人がけの待合ソファ
 ...パーソナルスペースを確保し、
  待合時間の対人ストレスを感じにくくします。

・防音の診察室
 ...診察の会話が外に聞こえない仕様とすることで
  患者さんが安心して症状を話せる環境を整えます。

・間接照明、電球色の照明の活用
 ...目に刺激が加わらず、
  緊張が緩和できるよう配慮します。

・自然の癒しが得られる工夫
 ...木やファブリックの温かい質感や
  お庭の植物を鑑賞できる環境などを用意します。
中庭.jpg


▼参考事例:
「医療法人社団慶和会様 なごみクリニック」

3.小児科の設計のポイント

【親子でリラックスできる空間を】

体調の悪い不安を少しでも和らげる工夫として、
なるべく親子が一緒にリラックスできる空間づくりを
目指します。

例えば

・長椅子タイプの待合ソファ
 ...子どもを抱きかかえて座ったり寝かせたりと
 フレキシブルに使えるようにします。

・待合にキッズスペースを設ける

・トイレは親子で入れるよう広めにする

などの工夫により対応できます。

【感染症対策】

子どもは様々な感染症にかかるリスクが高く、
建築でも念入りな対策が必要です。

クリニックの運用方針にもよりますが、

・下足入やベビーカー置場を設け、
 室内は上足利用とする
 ...靴や車輪に付着した土・雑菌を持ち込まない

・待合の一部に隔離室を作る

等を検討するのも有効です。

ファミリー.JPG多目的トイレとは別に、授乳やおむつ替えに使える個室を計画。
奥には隔離のできる特別待合も

4.まとめ

適切なゾーニングや動線計画は
患者さんの満足度向上はもちろん、
院内の感染防止・ミス防止のためにも絶対不可欠です。

実際の設計では
本コラムで紹介した概要をベースに、
院長先生の診察方針などを
設計事務所ならではの視点で丁寧にヒアリングしていきます。

コラム内でご紹介した事例作品は
本webサイト内「事例紹介」ページの他、
無料進呈の「医療・福祉施設設計事例集」にて
詳しくご紹介しております。
お気軽に資料請求からお申込みください。

設計事例はこちら

WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士

山﨑 正浩

山﨑アイコン.JPG

PAGE TOP