WARAKUSHA

2022.05.30

【メディア掲載記念】クリニック設計 決め手は 「患者さん」「医師」「スタッフ」3者の満足

この度
医師向け情報誌「BRIDGE」(2022年Vol.2)に
クリニックの建築に関する
山﨑のコメントが掲載されました!

発行の第一三共株式会社様、
制作のメディカルクオール株式会社様には
大変良い機会をいただきました。
ありがとうございます。

image0.jpegタイトル.jpeg全国のかかりつけ医の先生方を対象とした専門誌。

山﨑がお声がけいただいたのは
「心地よい院内環境」についての特集記事で、
建築士の視点から「空間づくり」を切り口に
お話ししています。

患者さんにとっての「心地よさ」は
「患者さん」だけでなく
「医師」「スタッフ」を含めた「3者」が満足できる
動線計画が決め手となる...
というお話をさせていただきました。


今回はメディア掲載を記念して、
これからのクリニック・医院づくりにおいて
取り入れていただきたい動線計画のポイントを
抜粋・解説します。


【目次】
0.なぜ「3者満足」が心地よさにつながるのか
1. 患者動線:「患者さん目線」は科目により異なる
2.医師動線:多忙な日々を無理なく過ごせる空間に
3.スタッフ動線:ストレスの無い動線で効率アップ

0.なぜ「3者満足」が心地よさにつながるのか

医院建築の計画において、
患者さんの満足度を優先することは
一般的に良いとされていますが、
それだけでは十分ではありません。
患者さんに気を遣い過ぎて
医師やスタッフが運営しにくい建物は
診察効率が悪くなり、
結果として患者さんの居心地の悪さに
つながってしまうからです。

どんな立場でも使いやすい動線計画をベースに
患者さん、医師、スタッフの「3者」それぞれが
動きやすい空間が提供できるよう、
設計者として日々手を動かしています。


▼関連記事▼
患者目線だけでは未完成。「3者満足」の動線計画とは

1.患者動線:「患者さん目線」は科目により異なる

患者さんの不安を取り除き、できればリラックスして
待ち時間や診察時間を過ごしていただける設計は
医院設計の中でも特に重要な要素です。
これには「患者さん目線」による設計が必須ですが、
医院の標榜科目によっても「目線」は異なります。
科目によって、来院される患者さんの属性や
心身状態が異なるからです。

【例1:自然光や緑を取り込んだ医院(内科)】

検査機能を持つ内科クリニックの例です。
待合01.jpg
待合室は待ち時間の負担を軽減できるよう
窓の外の緑が見える向きにソファを配置して、
壁や受付スタッフに視線が行かない設計としています。

また、検査の待機等で通される「中待合」は
患者さんの不安や緊張が大きくなりやすいため、
少しでも明るい気持ちで過ごせるよう、
トップライトから取り入れた太陽光を天井ルーバーで
和らげ、室内を照らす計画としました。
中待合1.jpg

ほとんどの場合、中待合は廊下の一部に設けます。
しかし暗い廊下に椅子を置いただけの中待合では、
患者さんの気持ちに寄り添えるでしょうか...?
限られたスペースでも安らぎや開放感を
感じていただける空間を作ることが、医院設計者の
役割であると考えています。

【例2:抜けるような開放感を出した医院(歯科)】

家族皆で通える歯科医院の例です。
老若男女誰もが親しみを持てる印象に仕上げ、
動線計画もシンプルに徹しています。
ガラスばりの待合室はクリニックであることを
忘れさせてくれると、ご好評のようです。
歯科医院1.JPG

診察室は閉塞感の無い半個室空間で、間仕切も半透明。
患者さんの緊張がほぐれるよう計画しています。
歯科医院2.JPG

【例3:プライバシーに配慮(心療内科・精神科)】

心療内科・精神科クリニックの例です。
出入りするところを誰かに見られたくないという
心理が働く場合に配慮し、外部からの視線が
遮断できる外観としています。

目隠し壁.jpg道路側には目隠し壁を設置。
柱が何本か建ったような開口のある壁で
視線はカットしながらも採光は可能に。


自動ドア例.jpg駐車場側の自動ドア。
視線カットのため
透明ガラスは避け木目にしている。


一方で、院内には閉塞感が出ないよう
中庭や高窓により明るい光や緑が存分に感じられる
設計となっています。
待合02.jpg

診察室例0.jpg会話が外に漏れない遮音仕様の診察室。
待合室とは遮断しながら
外の自然は感じられる空間で、
閉所恐怖症の患者さんにもご好評だそう。

▼関連記事▼
クリニック設計の注意点 第1回:患者動線

2.医師動線:多忙な日々を無理なく過ごせる空間に

特に個人病院の場合、医師(院長先生)は
次々と休みなく患者さんを診察されています。
医院設計者としても、ドクターの先生方が
多忙の合間に少しでも落ち着けるような空間設計を
心がけています。

【すきま時間で癒しが得られる環境を】

診察時間内、医師はなかなか休息の時間が取れません。
こちらの診察室からは緑が見えますが、
実は患者さんだけでなく医師のためでもあります。

診察室例1.jpg次の診察までの少しの時間でも
窓の外を眺め癒しが得られるよう
設計した診察室。


また、休憩時間には一人の時間を過ごせるよう、
独立した院長室を計画するのも有効です。
先生それぞれの働き方にもよりますが、
デスクワークや仮眠、シャワーが必要な場合は
院長室を完全な個室とし、しっかりと休める環境を
整えます。

【患者さんの視線対策】

建物への出入り時においては、
私服姿などが患者さんに見られないよう
駐車場や通用口の配置を工夫します。

また、診察室の扉が開いた際に
待っている患者さんと目が合う環境だと
「お待たせしていることに対し、申し訳なく感じる...」
といったお話も伺ったことがあります。

待合室の椅子の向きをずらし、
診察室の扉が開いた時も
「外の患者さんの様子はわかるけれど視線は合わない」
計画とすることで、このようなお悩みは解消できます。

▼関連記事▼
クリニック設計の注意点 第3回:院長動線

3.スタッフ動線:ストレスの無い動線で効率アップ

スタッフの動線では
・同じ場所を何度も行き来しない
・移動距離が少ない
という業務効率アップの原則を守ります。
その上で欠かせないのが「気分転換」への配慮です。
スタッフの方々も人間ですから、
勤務時間中に何らかのストレスを感じると
仕事のパフォーマンスは落ちてしまいます。
ストレスを溜めにくい空間づくりも、
スタッフ動線の設計において重要なポイントです。

【「休憩時間」を大切に】

スタッフがきちんとリフレッシュできるよう、
休憩室はなるべく広く確保し、光や風がよく抜ける
空間にすると仕事の効率も上がります。
スタッフが気持ちにゆとりを持って患者さんに接する
医院は、患者さんにとっても居心地が良いものです。
建築の工夫で、そんな環境が整うように感じています。

休憩室例.jpg畳コーナーを設けた休憩室。
足を伸ばし、思い思いに休憩できる。

▼関連記事▼
クリニック設計の注意点 第2回:スタッフ動線

4.まとめ

最後に一例として、検査部門を持つ消火器内科医院の
動線設計イメージをご紹介します。

ゾーニング.jpg

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① 駐車用と建物出入口は患者さん用と通用口に分け、互いに行き合わないよう動線を分離。
② 通用口から直結の医師・スタッフ専用の階段。
 2階の院長室やスタッフ休憩室につながっている。
③ 検査部門と診察部門それぞれに受付・待合室を
 設けている。患者さんの動線は
 ・診察→検査
 ・検査のみ
 いずれのパターンにも対応できる。
④ 患者さんが行き来する「待合」・「中待合」・
 「検査待合」。シンプルで迷いにくい動線に。
⑤ 救急搬送用の出入口。患者さんの駐車場や
 待合室からは見えない位置に設定している。

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医院設計のポイントとして、
立場別の動線計画をご紹介しました。

「患者さん」「医師」「スタッフ」の「3者」
の想いがつながり、長く愛されるクリニックに
なっていけば、設計者としても非常に嬉しい限りです。


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この記事は私が書きました

WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士

山﨑 正浩

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