【メディア掲載記念】クリニック設計 決め手は 「患者さん」「医師」「スタッフ」3者の満足
この度
医師向け情報誌「BRIDGE」(2022年Vol.2)に
クリニックの建築に関する
山﨑のコメントが掲載されました!
発行の第一三共株式会社様、
制作のメディカルクオール株式会社様には
大変良い機会をいただきました。
ありがとうございます。
山﨑がお声がけいただいたのは
「心地よい院内環境」についての特集記事で、
建築士の視点から「空間づくり」を切り口に
お話ししています。
患者さんにとっての「心地よさ」は
「患者さん」だけでなく
「医師」「スタッフ」を含めた「3者」が満足できる
動線計画が決め手となる...
というお話をさせていただきました。
今回はメディア掲載を記念して、
これからのクリニック・医院づくりにおいて
取り入れていただきたい動線計画のポイントを
抜粋・解説します。
【目次】
0.なぜ「3者満足」が心地よさにつながるのか
1. 患者動線:「患者さん目線」は科目により異なる
2.医師動線:多忙な日々を無理なく過ごせる空間に
3.スタッフ動線:ストレスの無い動線で効率アップ
- 0.なぜ「3者満足」が心地よさにつながるのか
-
医院建築の計画において、
患者さんの満足度を優先することは
一般的に良いとされていますが、
それだけでは十分ではありません。
患者さんに気を遣い過ぎて
医師やスタッフが運営しにくい建物は
診察効率が悪くなり、
結果として患者さんの居心地の悪さに
つながってしまうからです。どんな立場でも使いやすい動線計画をベースに
患者さん、医師、スタッフの「3者」それぞれが
動きやすい空間が提供できるよう、
設計者として日々手を動かしています。
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患者目線だけでは未完成。「3者満足」の動線計画とは- 1.患者動線:「患者さん目線」は科目により異なる
-
患者さんの不安を取り除き、できればリラックスして
待ち時間や診察時間を過ごしていただける設計は
医院設計の中でも特に重要な要素です。
これには「患者さん目線」による設計が必須ですが、
医院の標榜科目によっても「目線」は異なります。
科目によって、来院される患者さんの属性や
心身状態が異なるからです。【例1:自然光や緑を取り込んだ医院(内科)】
検査機能を持つ内科クリニックの例です。
待合室は待ち時間の負担を軽減できるよう
窓の外の緑が見える向きにソファを配置して、
壁や受付スタッフに視線が行かない設計としています。また、検査の待機等で通される「中待合」は
患者さんの不安や緊張が大きくなりやすいため、
少しでも明るい気持ちで過ごせるよう、
トップライトから取り入れた太陽光を天井ルーバーで
和らげ、室内を照らす計画としました。ほとんどの場合、中待合は廊下の一部に設けます。
しかし暗い廊下に椅子を置いただけの中待合では、
患者さんの気持ちに寄り添えるでしょうか...?
限られたスペースでも安らぎや開放感を
感じていただける空間を作ることが、医院設計者の
役割であると考えています。【例2:抜けるような開放感を出した医院(歯科)】
家族皆で通える歯科医院の例です。
老若男女誰もが親しみを持てる印象に仕上げ、
動線計画もシンプルに徹しています。
ガラスばりの待合室はクリニックであることを
忘れさせてくれると、ご好評のようです。診察室は閉塞感の無い半個室空間で、間仕切も半透明。
患者さんの緊張がほぐれるよう計画しています。【例3:プライバシーに配慮(心療内科・精神科)】
心療内科・精神科クリニックの例です。
出入りするところを誰かに見られたくないという
心理が働く場合に配慮し、外部からの視線が
遮断できる外観としています。道路側には目隠し壁を設置。
柱が何本か建ったような開口のある壁で
視線はカットしながらも採光は可能に。
駐車場側の自動ドア。
視線カットのため
透明ガラスは避け木目にしている。
一方で、院内には閉塞感が出ないよう
中庭や高窓により明るい光や緑が存分に感じられる
設計となっています。会話が外に漏れない遮音仕様の診察室。
待合室とは遮断しながら
外の自然は感じられる空間で、
閉所恐怖症の患者さんにもご好評だそう。▼関連記事▼
クリニック設計の注意点 第1回:患者動線- 2.医師動線:多忙な日々を無理なく過ごせる空間に
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特に個人病院の場合、医師(院長先生)は
次々と休みなく患者さんを診察されています。
医院設計者としても、ドクターの先生方が
多忙の合間に少しでも落ち着けるような空間設計を
心がけています。【すきま時間で癒しが得られる環境を】
診察時間内、医師はなかなか休息の時間が取れません。
こちらの診察室からは緑が見えますが、
実は患者さんだけでなく医師のためでもあります。次の診察までの少しの時間でも
窓の外を眺め癒しが得られるよう
設計した診察室。
また、休憩時間には一人の時間を過ごせるよう、
独立した院長室を計画するのも有効です。
先生それぞれの働き方にもよりますが、
デスクワークや仮眠、シャワーが必要な場合は
院長室を完全な個室とし、しっかりと休める環境を
整えます。【患者さんの視線対策】
建物への出入り時においては、
私服姿などが患者さんに見られないよう
駐車場や通用口の配置を工夫します。また、診察室の扉が開いた際に
待っている患者さんと目が合う環境だと
「お待たせしていることに対し、申し訳なく感じる...」
といったお話も伺ったことがあります。待合室の椅子の向きをずらし、
診察室の扉が開いた時も
「外の患者さんの様子はわかるけれど視線は合わない」
計画とすることで、このようなお悩みは解消できます。▼関連記事▼
クリニック設計の注意点 第3回:院長動線- 3.スタッフ動線:ストレスの無い動線で効率アップ
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スタッフの動線では
・同じ場所を何度も行き来しない
・移動距離が少ない
という業務効率アップの原則を守ります。
その上で欠かせないのが「気分転換」への配慮です。
スタッフの方々も人間ですから、
勤務時間中に何らかのストレスを感じると
仕事のパフォーマンスは落ちてしまいます。
ストレスを溜めにくい空間づくりも、
スタッフ動線の設計において重要なポイントです。【「休憩時間」を大切に】
スタッフがきちんとリフレッシュできるよう、
休憩室はなるべく広く確保し、光や風がよく抜ける
空間にすると仕事の効率も上がります。
スタッフが気持ちにゆとりを持って患者さんに接する
医院は、患者さんにとっても居心地が良いものです。
建築の工夫で、そんな環境が整うように感じています。畳コーナーを設けた休憩室。
足を伸ばし、思い思いに休憩できる。▼関連記事▼
クリニック設計の注意点 第2回:スタッフ動線- 4.まとめ
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最後に一例として、検査部門を持つ消火器内科医院の
動線設計イメージをご紹介します。---------------------
① 駐車用と建物出入口は患者さん用と通用口に分け、互いに行き合わないよう動線を分離。
② 通用口から直結の医師・スタッフ専用の階段。
2階の院長室やスタッフ休憩室につながっている。
③ 検査部門と診察部門それぞれに受付・待合室を
設けている。患者さんの動線は
・診察→検査
・検査のみ
いずれのパターンにも対応できる。
④ 患者さんが行き来する「待合」・「中待合」・
「検査待合」。シンプルで迷いにくい動線に。
⑤ 救急搬送用の出入口。患者さんの駐車場や
待合室からは見えない位置に設定している。---------------------
医院設計のポイントとして、
立場別の動線計画をご紹介しました。「患者さん」「医師」「スタッフ」の「3者」
の想いがつながり、長く愛されるクリニックに
なっていけば、設計者としても非常に嬉しい限りです。
コラム内でご紹介した事例作品は
本webサイト内「設計事例」ページの他、
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WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士