「感染症に強い」これからのクリニックの設計ポイント
長引くコロナ禍で、
多くの施設や店舗で建物の使い方が一変しました。
中でも病院・クリニックや福祉施設は
一般的に免疫力の弱い方の利用が多く、
新型コロナウイルスに限らず将来にわたり、
「感染症に強い」施設づくりが求められています。
このような背景をふまえ、本コラムでは
「これからのクリニックに求められる設計ポイント」
についてお話しいたします。
【目次】
1.屋外診察と駐車場
2.受付・待合の飛沫対策
3.トイレと手洗いの位置
4.隔離室と換気
5.スタッフルームと休憩
- 1.屋外診察と駐車場
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発熱のある初診患者さんに対して、
屋外駐車場で検温・診察をされるようになった
先生方も多いのではないでしょうか。雨天時の屋外診察対策には、駐車場に車寄せ等の
屋根のある空間を広く設けることで応用が可能です。
特にドクターが直接外に出られる場合には、
待合室を通らず、通用口から雨に濡れずに
車寄せまでアプローチできる動線を確保しておくと
屋内運営との連携もスムーズです。ちなみに
車寄せは通常時はご家族の送迎等で重宝されるため、
WARAKUSHAで設計させていただく医院や
福祉施設でも可能な限りゆったりと確保しています。
- 2.受付・待合の飛沫対策
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これから施設を計画する際には、
受付の飛沫飛散防止パネルの検討を
設計段階から行うと機能が高められ、
デザイン上も美しく納まります。後付けで工事後にビスで留め付けたものや
ビニルカーテンなどは
見た目上も応急処置的になり、
運用面や衛生面でも扱いにくくなりがちです。患者さんに手渡しする物のサイズなどもふまえ
パネルの位置や取付方法を決定すると、
機能とデザインが空間に馴染みます。
また、透明パネルはこまめに拭き取りができ、
照明の光や暖房の熱などの影響を受けにくい素材を
選ぶことも大切です。ここで注意したいのは、
会話の聞き取りについてです。
透明とは言え隔て壁ができることで
音声は遮られ、
言葉を発する唇の動きも見えずらくなります。
特に高齢の患者さんが多い医院などでは
アクリルパネルにスピーカー・マイクを組み込むなど、
どんな方も気持ちよく受付が利用できる方法を
設計者に相談されてみてはいかがでしょうか。ゆったりした席配置の待合室。
換気面・心理面ともに安心な、外の空気が感じられる空間。
- 3.手洗いの位置
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私が他院の話として見聞きした中には、
トイレに手洗いがなく、広い廊下を渡った向かい側に
洗面コーナーが配置されていたケースがあります。
これでは感染症対策にならないのはもちろん、
衛生上も良くありません。
スペースが許せば多目的トイレとした個室内に、
そうでなくてもトイレのエリア内には
手洗いを設ける前提とすると良いでしょう。また、毎日多数の利用者が通う福祉施設等では
出入口で手が洗えるよう、玄関部に洗面コーナーを
設けることをおすすめしています。
屋外活動から帰ってきた際にも自然な動線となります。現在の傾向として、
手洗いの水栓(蛇口)は自動水栓が主流になっています。
非接触型を基本とする設備計画は、
患者さん用だけでなく、スタッフ用においても
今後必須とした方が安心です。ただし需要が急激に増えた2021年現在では
数か月単位の納期がかかる場合もありますので、
特に改修等でスケジュールに余裕がない場合には
早目に設計者に相談されることをおすすめします。
- 4.隔離室と換気
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待合室とは別に隔離室を設ける場合には、
換気計画でもウイルスまん延防止の対策ができます。
換気設備には給気と排気の二種類があり、
給気が強い換気設備はクリーンルームなどに用いられ、
室内にウイルスや粉塵を寄せ付けません。
逆に排気が強い換気設備はトイレなどに用いられ、
その室から屋外へウイルスや臭気などを逃がします。
クリニックで言うと、
待合室を給気型、隔離室を排気型とすることで
感染症対策に有効な換気計画となります。
- 5.スタッフルームと休憩
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スタッフの休憩時間の過ごし方が
コロナ禍を境に変わったというお話がほとんどです。
机を大勢で囲み会話しながら昼食を摂る状況は、
残念ながらこのご時世では好ましくありません。机のレイアウトで言うならば、
全員が壁を向いて座るスタイルであっても
カフェのカウンター席のように机上に窓を設けるなど、
少しでも閉塞感を和らげる工夫が必要となってきました。スタッフが各々リラックスしながら
思い思いに過ごせるインテリア計画とすることは
ウイルスの流行に関わらず普遍的な理想でもあります。
ストレスを溜めない空間づくりは、
スタッフの免疫力アップのためにも今後さらに
重要な要素となってくるでしょう。