クリニック新築の流れ【第1回:「基本設計」で高精度の予算・スケジュール】
- 0. クリニック新築 打合せの流れ
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医院開業前の準備には事の大小、期間の長短様々ありますが、
中でも建物の設計打合せは非常に重要な準備の一つです。
この打合せが甘いと
後に想定外の増額や不具合を生む原因にもなりますので、
丁寧かつ適正なタイミングで進める必要があります。いつ、何を決めれば
予算・デザイン共に納得の建物が完成するのでしょうか?
このコラムでは、
クリニック新築時の打合せを3段階に分け、
時系列に沿ってポイントをお伝えします。
ぜひ、参考になさってください。打合せの流れ:
今回のコラムは第1回として
「基本設計」についてのご紹介です。【目次】
1. 「基本設計」のゴールは?
2. まずは素地づくり。コンセプトで全体の「軸」を通す
3.基本設計で決める3つの計画 諸法令にも注意
- 1. 「基本設計」のゴールは?
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【デザインだけでない大きな目的】
「基本設計」のゴール(目的)は、
デザインの方針を決めることだけではありません。デザインを含めた建物プランの骨子を組み上げ図面化し、
工事の金額とスケジュールを概算することが
大きな目的です。ここでの検討にヌケ・モレがあると
後に実際の工事金額や期間がどんどん膨れ上がってしまうため、
あらゆる留意点をひと通り網羅しておく必要があるのです。精度の高い予算組みとスケジューリングには
緻密な「基本設計」が必須となります。
設計者の業務フェーズとしては初期にあたりますが、
<ここで組んだ骨子にそのまま肉付けすれば施工できる>
という水準まで検討を行った上で
お施主様への提案内容を作成するのが「基本設計」です。
- 2. まずは素地づくり。コンセプトで全体の「軸」を通す
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【「迷ったら戻るところ」を決めておく】
開院という一大プロジェクトにおいては
建物の打合せでも、まずは治療方針・経営方針を含めた
全体コンセプトを深く共有することが大切です。
これは医院経営のコンセプトを元に
建築におけるコンセプトを作るという目的があるからです。これから始まる打合せにおいて、建物の仕様や色など
迷うことも出てくるかもしれません。
そんな時にもコンセプト=「戻るところ」が共有できていると
おのずとデザイン上のガイドラインが浮かび上がり、
きれいに軸の通った建物が出来上がるのです。【用途、規模、予算、スケジュール...根底はコンセプト】
「どんな建物を、いつまでに完成させたいのか」も
最初にヒアリングすることのひとつです。
建物の用途や規模に加え、
特に予算とスケジュールは事業を左右する項目ですが、
これらの妥当性を建築の専門家として判断する場合にも
コンセプトの共有が前提条件となります。
万が一「予算が少ない・期間が足りない」等
妥当でない部分があった場合にも、
建築コンセプトは崩さずに調整できる項目を
提示することができるからです。コンセプト共有によりプロジェクトの素地を作ったら、
いよいよ建物の計画へ。
「基本設計」で決める具体的な内容をご紹介いたします。
- 3.基本設計で決める3つの計画 諸法令にも注意
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【①配置計画:土地に関するあらゆる条件を融合し練り上げる】
計画敷地のどの位置に建物を置くかを決める配置計画。
周辺環境や道路、近隣建物などが絡み合うことから、
基本設計の初期段階にしっかりと行います。クリニックのコンセプトを元に、
通りから建物入口まで見渡せるオープンな印象を重視するか、
はたまた逆に
患者さんのプライバシー重視の奥まった配置とするか等、
まずはあらかたの方向性を定めます。また、WARAKUSHAの主な対応エリアである
浜松、磐田などの静岡県西部は車社会ですので、
駐車場の必要台数もこのタイミングであたりを付けています。設計者の具体的な業務としては、
現地調査や各種文献・資料等で敷地情報を揃え、
敷地と建物の関係を検討します。周辺環境・歴史等その土地の「文脈」、
車や歩行者等の交通量、空・緑・水、
外部からの光や視線の入り方を総合し、
建物配置を複数パターン試していくのです。なお、配置計画時に注意したいのが「開発行為」についてです。
農地からの転用など、計画地が都市計画法上の
「開発許可」の対象となる場合、
土地に調整池等を設けることが求められます。
駐車場や外部通路として期待していた面積が
確保できない可能性もありますし、
これらの造成に充てる工事費も必要です。
また、開発手続の期間も考慮しなければなりません。
予算にもスケジュールにも大きく関わる内容となるため、
早期の打合せが必須となります。建物の配置計画と並行して、
計画地の「地面」に目を向けるのも設計者の役割です。例えば地盤調査。
結果によっては後に予算を大きく左右する要素であり、
事前の調査が大切です。地盤補強の必要性があるか、
建物構造にて対応すべきか等を予め精査することで、
早期から金額面と照合した計画が可能となるのです。その他「地面」に関しては
既存樹木の生態調査により、
そのまま活かせるか、
盛土をしても生育に差し支えないか、
移植が可能であるか等の可能性を探ります。【②平面計画:間取り・動線は「ゾーニング」から】
間取りや動線計画を含む平面計画では、
前準備として「ゾーニング」を行います。
建築で言う「ゾーニング」は、
諸室をカテゴリごとに分別した上で
各カテゴリをどのようにレイアウト・接続するかを
検証するプロセスを指します。そしてカテゴリの分類方法の基準には、
コンセプトが大きく影響します。標榜科目に対する考えや見せ方、
院長先生とスタッフの患者さん対応の割合、
診療の流れや好みの雰囲気...。
新築プロジェクトの根幹となる事項であるため、
設計打合せの際は特に丁寧にヒアリングしています。実際の事例と併せ、ゾーニングの一部をご紹介しましょう。
院長先生自ら複数ケアを行うアットホームなクリニック諸室をスタッフの動きに沿って配置し、
院長室はすべてに均等に往来できる位置となるよう
ゾーニングしています。住宅併用+複数部門、プライバシー重視のクリニック
全体では医院空間と住空間、
医院内では部門別(診察、検査)+バックヤード
というゾーニングです。ゾーニングが固まったらいよいよ平面計画。
間取りや動線を決めていきます。
収納や水回りの概要を検討するのもこのタイミング。
設計者としても、実際の運用を想定しつつ
手を動かして考えます。【③立面計画:平面計画と同時進行。法検討も正確に】
平面計画の際、諸室の用途によって
必要な天井高や窓の位置などが異なるため、
高さ方向の検討も同時に行う必要があります。さらに、室内の高さを考えることは
建物の高さや屋根形状を考えることとイコールの関係。
よって、平面計画は
立面計画(外観デザイン)と並行して行うのが
自然の流れであるのです。それに加え、建物には
建築基準法や消防法など、
あらゆる法律が複層的に関わります。
建物の高さや面積、構造方法、
採光・換気・排煙や避難に関連した
窓・ドアの位置やサイズ...。
いずれも平面方向・高さ方向を同時に把握し、
早期からデザインに反映させたいところです。機能もデザインも
納得の建物を手に入れていただくために。
平面計画と立面計画を
法令検討も含めた三輪体勢で、
丁寧にプランを練り上げています。【予算に関わる法令に注意】
建築基準法や消防法など、
適用される法令の内容によっては、
建物の予算を大きく左右する可能性があります。例えば入院施設のある病院や
入所機能を持たせた福祉施設などでは
スプリンクラーの設置が義務付けられる場合がありますが、
スプリンクラーは数百万円単位の金額を要する設備です。
また、火災対策で内装に不燃材料の使用を課される場合、
面積の広い壁や天井の材料が対象となるため、
制限がない場合と比べ工事金額は目に見えて上がります。盲点になりがちな法令関係ですが、
予算立てを行う設計初期だからこそ、
以上のようなポイントを確認することをおすすめします。
- 4. まとめ
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クリニック等医院開業にあたり、
建物新築打合せの初期段階
「基本設計」についてご紹介しました。次回コラムでは次の段階「実施設計」において、
どのような観点で計画を進めて行くかについて
お話ししたいと思います。工事を含めた全体の流れについては、
「設計の流れ・よくある質問」
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林齒科医院様 ほか
この記事は私が書きました
WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士