WARAKUSHA

2021.01.27

クリニック設計の注意点 第3回:院長動線

0. 院長動線から見たクリニック設計の注意点

WARAKUSHAが大切にしている
「顧客(患者)」「従業員(受付・医療スタッフ)」「経営者(院長)」
の「3者」が満足する動線計画について、第3回である今回は
「経営者(院長)」
のお話しです。
ハードな院長先生の一日を支える動線計画について、事例を交えながらご紹介致します。

前回までのコラムはこちら:
総論:「3者満足」の動線計画
第1回:「患者動線」
第2回:「スタッフ動線」

【目次】
1. 出勤:通用口~院長室
2. 診察時間内:診察室等、裏動線
3. デスクワーク・休憩:院長室

1. 出勤:入口~院長室

【出勤時の動線は医院経営の要】
例えば在・不在を自家用車の有無で推察されるなど、院長先生の動向は患者さんや地域の方から想像以上に見られています。
WARAKUSHAではこのような「舞台裏」は出来る限り隠せる計画とすることが院長先生のパフォーマンス向上とクリニックのブランド化につながると考え、院長先生の出勤の動線を医院経営の要と捉えて計画しています。
駐車場から通用口へと入る様子が外部から見られない外構計画にはじまり、建物に入ってからも患者さんの目に触れずに院長室に入れる裏動線を作ることを基本とすると良いでしょう。
また、医院併用住宅では屋内で自宅から院長室を直結させた事例もあります。ただ、院長先生によっては「気持ちをしっかりと切り替えるため、たとえ同じ建物であっても一旦自宅の玄関を出てから出勤したい」というお考えの方もいらっしゃいます。院長先生の仕事観は、このようにクリニックデザインの随所に現れるのです。

【診察中の利用を想定した身支度スペース】
トイレ・洗面は診察の合間に使うことを想定し、院長室と診察室の間の裏動線上に配置すると良いでしょう。
スタッフと兼用になるケースも含め、患者さんの視野に入らない位置に計画します。

2. 診察時間内:診察室・検査室等、裏動線

【業務分担と裏動線】
診察・検査関係で先生やスタッフが使う「裏動線」の計画前に、それぞれの担当業務の範囲を明確にしておくことが重要です。
たとえばレントゲンやMRIなどの諸検査も院長先生が担当する場合には、診察室から検査諸室まで直通の裏動線を確保することをおすすめします。患者さんの使う「表動線」を検査への移動に使うと、検査前の先生が患者さんから話しかけられて予定が遅れる可能性があるからです。
他にも「採血・点滴担当は看護師」、「歯のクリーニングは歯科衛生士」といった医師が関わらない患者対応に関しては診察室関連の動線と分けるなど、診察の方針に合わせて動線をシンプルかつ明確にカスタマイズすると良いでしょう。

【カルテや書類のやり取り】
看護・医療スタッフや受付事務スタッフ等との「モノ」のやり取りについても、オンラインか手渡しかによって計画が変わってきます。
たとえばカルテや問診票等を紙で手渡しする場合、WARAKUSHAの設計事例では、診察室と受付事務室とを隣接させ、壁に書類のみを受け渡せる仕掛けを設けたものもあります。
書類のやり取りが患者さんの誘導とセットの場合には誘導スタッフの拠点を診察室と受付の間に設けるなど、院長先生の指示がスムーズに届けられる仕組みを建物の計画にも反映させます。

【最も「待ち時間短縮」を望むのは院長先生?】
患者さんが待ち時間短縮を望むのはもちろんですが、「待ち時間」に一番シビアなのは、実は院長先生なのかもしれません。なぜなら、診察の回転率がクリニック経営に直結するからです。
あるクリニック様の移転新築設計では、移転前から常に予約で埋まっている人気医院であったため、少しでも多くの患者さんを診られるようにと待合室から診察室までの歩数と時間を計算し、動線計画を立てました。
書設計段階のこうした努力が、クリニックとしての「基礎体力」の確保につながります。

3. 診察・検査外業務・休憩:院長室

【デスクワークは自室派か?】
診察時間外のデスクワークにも日々まとまった時間が必要、と仰る院長先生が大多数いらっしゃいます。デスクワークのスタイルとしては、十人十色。集中して業務に取り組むため院長室に「こもる」先生、資料の集まっている診察室でそのまま作業される先生、スタッフと適宜コミュニケーションをとりながらパソコンに向かう先生等さまざまです。院長先生のスタイルに応じて、診察時間外の業務にスムーズに移行できる動線を検討していきます。

【来客対応を考える】
各種打合せや商談、面接等、院長先生のみで対応される応接シーンも、患者さんと被らない「裏動線」に採り入れていきます。
来訪者の受付場所を患者さんの受付と兼用するか、通用口のインターホンを押してもらうのか等の選択から始まり、応接室の要・不要を含めて諸条件をもとに計画します。
経営者である院長先生のもとには、多くの来客が来られることと思います。患者さん対応と並行して検討したい項目です。

写真手前が院長室。奥の廊下から順に書棚の前室・応接室とつながる

【休憩、仮眠、宿泊について】
主に院長室を想定した話になりますが、休憩や仮眠、そしてクリニックに宿泊する可能性についても設計に反映できると、その空間はパフォーマンス向上への貢献度が高いと言えるでしょう。
仮眠の習慣がある先生なら、室内に自然光・音が入る/入らないの好みが動線計画に盛り込めると、睡眠効果の向上が期待できます。
また、ご自宅が医院から遠い先生の場合には、状況により院内も宿泊する日もあるかもしれません。シャワー等設備的な部分にも関わりますので、開業後のライフスタイルをざっくばらんに設計者と共有されると計画がスムーズです。

4. まとめ

クリニック動線計画シリーズの最終回である今回は、院長先生にフォーカスした動線のお話をさせていただきました。
日々多様な業務をマネジメントされる院長先生を、空間設計者としてサポートできる点はまだまだあります。

今回写真でご紹介した事例は無料進呈の「医療・福祉施設設計事例集」でも詳しくお伝えしております。ぜひ、資料請求からお申込みください。

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今回ご紹介の事例       

鈴木内科様

この記事は私が書きました

WARAKUSHA代表 一級建築士・管理建築士

山﨑 正浩

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